口腔キュア1
<口の治療(虫歯について)>

Q1. 虫歯とは、どのような病気ですか。
口腔内の二大疾患は、虫歯と歯周病です。共に、細菌による感染症で、歯を失う原因の約90%を占めています。もう少し詳しく述べますと、歯を失う原因は15〜24歳位までは虫歯が70%、歯周病が10%ですが、40歳以上になると歯周病が約90%と高い率になります。若いうちに、虫歯予防と適切な治療を自ら積極的に行うことが、歯を失うことを防ぎ、全身の健康にも役立つと言えます。
では、虫歯とはどのような病気でしょうか。
歯の表面のエナメル質は、体の中で最も硬い部分です。歯は水晶に近い硬さがあるものの、酸には弱く、歯を一晩酢につけておくとナイフで切れるくらい軟らかくなってしまいます。酸である歯垢がいつも歯にくっついていると、たちまちエナメル質は溶かされ虫歯になります。虫歯の穴は、自然に修復することはできません。

Q2. 歯の構造は、どのようになっていますか。
●エナメル質:歯の表面をおおうエナメル質は、体の中で最も硬い部分です。成分の95%以上は、ハイドロキシアパタイトの結晶でできています。
●象牙質:エナメル質より軟らかいですが、骨よりは硬いのが象牙質です。エナメル質と違い有機質でできているので、酸素や栄養を必要とします。
●歯髄:細い血管や神経、リンパ管などが通っています。俗にいう神経とは、この歯髄のことです。象牙質に酸素や栄養を供給しています。
●歯根膜:歯と歯を連結していて、噛むことによって受ける力を骨に直接伝えないように暖衝するクッションの役割を果たしています。

Q3. 虫歯の進行程度で、初期の段階を教えて下さい。
虫歯はエナメル質が溶かされるC1から始まりますが、それ以前の虫歯予備群の段階もあります。Co(要観察歯)といわれ、歯の表面が白濁しており、歯の表面のエナメル質を溶かして、中からカルシウムが溶け出す「脱灰」という状態です。このくらいの時は、削らずに様子を見ます。ブラッシングで歯垢を落とし、フッ素塗布も行い、さらに唾液中のカルシウムで回復することを期待します。

Q4. C1の虫歯とは?
歯の表面のエナメル質が溶け始めた、ごく浅い虫歯です。ほとんど痛みはありませんが、熱いものや冷たいものがしみることがあります。
この段階の治療は、A虫歯に浸されているところを全部、しかし最小限のみ削り取ります。B削った穴に修復剤を詰めます。

Q5. C2の虫歯とは?
虫歯が進み、象牙質に達しています。象牙質はエナメル質ほど硬くないので、進行が早くなります。見た目は小さな穴なのに、削ったら中で虫歯が広がっていた、ということがあるのはそのためです。
また穴が歯髄に近づくにつれて、冷水や冷気がしみるようになります。エナメル質の下にある象牙質は、歯髄からの神経の先の細い管に通じているからです。象牙質に達した虫歯は痛みを伴います。
この段階の治療はC1とほぼ同様ですが、C2の虫歯は詰め物では修復できないことがあります。その時は、インレーやアンレーという、削った穴の形に合わせて作ったものをはめ込み、合着します。
A虫歯の部分を削ります。B型どりをして、削った穴の形通りの詰めものを作り、はめ込み、合着します。
前歯の場合は、歯の色に近い修復材を詰めます。いずれも、歯髄を保護する薬を入れ型どりをしたり、歯髄を保護する修復材や合着材を用いたりもします。

Q6. C3の虫歯とは?
虫歯が歯髄まで達していて、大きな穴があいています。歯髄炎を起こしているため激しく痛み、炎症が進行すると歯髄が死んでしまいます。
●歯髄充血:虫歯が歯髄まで達しはじめた段階。C2からC3へ進む途中くらいの状態で、歯髄が赤みを帯びている。まだ痛みは鈍く、熱いものや冷たいものがしみることがある程度。
●単純性歯髄炎:軽い炎症が起こっている段階。水を飲んだあとに痛みが残ったり、夜に少し痛んだりする。歯髄を守り処置をすれば、抜髄をせずに済む。
●急性化膿性歯髄炎:ズキンと激痛が走り、大人でもがまんできないほど。歯髄は化膿して炎症も激しく、抜髄することが多い。
●えそ性歯髄炎:炎症がさらに悪化し、歯髄がくさっている。歯を削ると悪臭があることも。歯髄は死んでしまっているので、痛みはほとんどない。
この段階の治療では、歯に栄養を送っていきいきさせる役割がある歯髄をできるだけ残したいもの。けれども炎症が強ければ歯髄を除去せざるを得ないこともあります。
A歯髄を除去する。B歯髄を除去した根管を消毒する。C根管内にガッタパーチャという充填物を詰める。Dクラウンをかぶせる。
○クラウン材料の種類例
1) 硬質レジン・ポーセレン:奥歯では金属を使うのが一般的だが、審美性を考えてレジンやポーセレンを使うこともある。(保険が適用されるものとされないものがある)
2) 金銀パラジウム:その名の通り、金、銀、パラジウムなどの合金。奥歯などに用いられる。(保険が適用される)
3) 貴金属:白金と金の合金(白金加金)。歯科用の合金としては理想的なもの。奥歯などに用いる。(保険は適用されない)

Q7. C4の虫歯とは?
歯冠部がほとんどなくなり、根だけが残っている状態。歯髄は死んでいると痛みは感じませんが、根が化膿して(歯根膜炎)うみがでたり、はれて悪臭があったりします。
この段階の治療は、残された根がしっかりしていれば、C3の治療と同様に根管治療をしてクラウンをかぶせることになります。歯肉の中まで虫歯になってしまった根や、根が割れてしまっている場合は、使うことができないと判断し、抜歯することになります。その後は、ブリッジや義歯で補います。
○歯は抜けたままにしない
歯の1本ぐらい、とあなどることなかれ。たとえ1本でも放置しておくと、残っている歯が動いて歯並びが悪くなります。これは、見た目だけではなく、かみ合わせの悪さからくる障害が全身に現れることもあるので要注意です(頭痛、肩こり、腰痛、ひざの痛み、顎関節症や、生理不順やリウマチなどの慢性病)。
○抜けた歯を補う方法として
・歯冠継続歯:さし歯や継ぎ歯と呼ばれます。根をいかして穴をあけ、そこに人工の歯冠に芯棒つきの土台を立てます。その上に人工の歯冠をかぶせたものです。
・ブリッジ:取り外せない義歯のこと。橋という意味の通り、抜けた歯の両側を支えにして、橋を渡すように人工歯を固定します。主に1本の歯を補うときに。
・局部床義歯:歯槽堤(歯ぐきのドテ)をはさむ床があり、この床とバネなどの維持装置で、人工歯を固定させます。取り外しのできる義歯です。
・総義歯:歯槽堤に密着させた床で人工歯を固定させた、取り外し可能な義歯。80歳になると、日本人の約半数がこの総義歯だといわれます。
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