唾液のはなし



























































 唾液のはたらき
口腔のはたらきのなかで、特に重要なものに唾液の存在がある。唾液のはたらきには咀嚼や嚥下時の潤滑材としての補助作用や、歯や粘膜を外傷から守る保護作用、口腔内を洗い流す洗浄作用、味覚に関与する溶媒作用、口腔内を中性に保つ緩衝作用などがある。特に口の中に入った食べ物は、水溶液(唾液)に溶けてイオンや分子の形で、味を感ずる味細胞群(味蕾)で感知するため、溶媒作用を有する唾液のはたらきは、おいしく食べるためにとても重要である。その他、全身に関係するはたらきとして、化学的消化作用、構音・発声における円滑作用、抗菌作用、排泄作用、内分泌作用などがある。(表2)

 唾液分泌減少症
高齢者・障害者の口腔機能障害の特長である唾液分泌障害のほとんどは、唾液分泌減少症(口腔乾燥症)である。この原因は加齢による変化や、シェ‐グレン症候群や放射線照射による唾液腺機能の喪失などがあるが、おもに薬剤の後遺症としての影響が大きい。症状としては舌が乾く、口の中が粘つく、舌がピリピリする、口が臭い、味がない、しゃべりにくい、義歯が合わないなどがある。唾液の作用から症状を検証してみると(図7)。


-----洗浄作用の低下----
洗浄能力の低下により口腔内細菌が停滞・増殖をおこす。特に真菌類であるカンジダ菌が舌背にこびり付き、味細胞群(味蕾)を覆い、口臭や味覚異常を引きおこす。

-----緩衝作用の低下-----
緩衝能とは、口腔に入ってくる、酸、アルカリ物質を中和する能力で、低下を起こすと、口腔内細菌の産生する酸性物質を中和することができず、ウ蝕や歯周炎の悪化や、口臭を引きおこす。

-----円滑作用の低下-----
潤滑力がなくなり舌が円滑に運動せず、構音、発声が困難になる。

-----義歯の保持作用の低下-----
口腔内の水分が低下すると、義歯の脱落(ガラスの板を2枚重ねても付かないが、水を間に1滴垂らすとつきやすくなるように、総義歯の吸着には唾液が関与している)や、疼痛をおこす(粘膜保護作用の低下)。
以上のように、唾液が高齢者・障害者の口腔機能維持にとても重要な要因となる。おいしく食べるためには、唾液の分泌促進のための口腔ケアや口腔リハビリが必要となってくる。