口腔ケアの手順












































































口腔ケアの手順

口腔ケア(口腔清掃)の目的

口腔ケアはう蝕や歯周疾患などの口腔疾患の予防ととらえがちであるが、本来の目的は口腔疾患の予防以外に咀嚼・嚥下・会話といった摂食や発語機能の維持や口臭予防、味覚改善の効果も含まれる。また口腔内細菌による誤嚥性肺炎などの全身疾患への予防も目的としている。その結果、快食・快眠・快便、家族との良好な人間関係、生への意欲といったQOLの向上を目指している。

口腔ケアの手順

口腔ケア(狭義)は大きく分けて、口腔組織をケアする口腔清掃と義歯清掃があり、口腔清掃の方法には、含嗽 口腔清拭 歯磨き 専門的口腔清掃がある。専門的口腔清掃は、歯科小器具などを使い歯垢や歯石を除去する方法で、時として、観血処置をともなうため歯科医師、歯科衛生士、訓練された看護師が行う医療的行為である。口腔ケアは毎食後、継続的に繰り返されるもので、手順を決め、効率的、かつ確実に行わなくてはならない。また口腔内細菌には嫌気性菌が多く。就寝時に繁殖するために、夕食後のケアは特に入念に行う必要がある。手順について述べる。

1声がけ

口腔ケアを始めるにあたっての問題は、要介護者の不安と誤嚥である。要介護者にとって口の中に手を入れられるほど不安なことはなく、まして他人であればなお一層のことである。その不安をなくすためにも声がけをし、安心と信頼を得なければならない。またうがい水などの誤嚥の多くは、覚醒していない場合におこりやすく、声がけが誤嚥防止に効果的である。

2用具の配置

用具は清掃途中で席を立たないように、前もって準備しておく必要がある、また清掃の手順を決めておくことで、安全で確実なケアが行え、時間の効率化が図れる。

3姿勢・安全性の確保

口腔清掃の自立度(自分で磨けるか、介助が必要か。または座位か寝たきりか。)によって、要介護者や術者の安全で無理のないに姿勢を確保する。

4口腔の観察

口腔内に残査物が残ってないか、また出血や痛み、腫れ、口臭、乾燥は無いかを確認する。

5口腔ケア

口腔清掃の方法

1)含嗽は基本的には「うがい」であるが、用いる溶液によって薬効のないレモン水、ミント水、緑茶などの爽快感や清涼感を期待する洗口剤系とヨウ素、アズレン製剤など抗菌、消炎を目的とする含嗽剤系に分けられる。使用方法は口腔内の疾病の状態、感染、乾燥、口臭などを把握して製剤を選択する必要がある。最近では緑茶のカテキンの効果も評価されている。

2)口腔清拭は食後の残査物や喀痰などをぬぐうことであるが、体の清拭と違い歯と歯の間や歯肉との間には多くの隙間があり、複雑な構造をしているため、ぬぐうだけでは間に残査物を押しこんでしまい、方法を誤ると悪化する恐れがある。口腔清拭は必ず歯ブラシを使用することを前提で行わなければならない。

3)歯磨きに使用する歯ブラシは柄がまっすぐで、毛の硬さは軟らかめのものがよい。また歯ブラシ以外に口腔清掃用具(歯間ブラシ、デンタルフロス、舌ブラシなどは必ず必要となるので、使用方法を習得しておく必要がある。残査物が残りやすいところは歯と歯肉の境目や奥歯の噛む面、歯と歯の間であり、丁寧に清掃する。また口腔内細菌の繁殖しやすい、舌や口蓋の清掃も舌ブラシやスポンジブラシなどで十分なケアが必要である。

義歯の清掃・管理

1)高齢になると、う蝕や歯周疾患の悪化から多数歯欠損が起こり、義歯の装着を余儀なくされる。義歯は口腔内装着時間も長く、口腔内の適度な温度、湿度により、細菌の増殖に適した環境であるため、細菌の温床となりやすい。とくに義歯内面は粗雑であるために増殖しやすく、口臭や誤嚥性肺炎を引き起こす原因となる。義歯の清掃方法で注意しなければならないことは、義歯はプラスチック(レジン)や金属の部分(クラスプなど)で精密に作られているために、清掃の際に変形や破損しやすく取り扱いは丁寧にしなくてはならない。とくに義歯のクラスプの部分は破損しやすいので義歯専用の義歯用ブラシを用いる方が手入れがしやすい。また熱湯などは変形しやすいので、使用しないようにする。

2)義歯の管理では、夜間など長時間使用しない場合は、義歯の乾燥防止のため、水などの入った容器に保管する。ただし義歯洗浄剤を使用した際に痴呆症状のある方は、その中に入っているものを誤飲しまうこともあるので、湯のみなどの容器は使用せず、専用の義歯保管容器を必ず利用する。

6口腔の観察・あとかたづけ

口腔内に歯研剤やうがい水が残っていないか確認し、使用したガーゼやペーパータオルなどは感染性廃棄物として処理する。また使用した歯ブラシなどの小器具は十分に洗浄乾燥する。場合によっては殺菌・消毒を行い、ケアする前の状態にもどして終了とする。