介護食定義1













































「介護食」は歯科医師にとっても日常使われる用語である。特に訪問歯科診療や居宅療養管理指導等においては口腔ケアと同様に食事指導の際に使用している。しかし介護食の定義がないため、介護士やホームヘルパーへの食事指示や口腔機能の向上訓練においての言語聴覚士、看護師等との連携、栄養士に対しての訪問栄養指導の要請にも支障をきたしている。
歯科医師にとっての「介護食」の用語は嚥下食、嚥下困難食以外に義歯のための義歯食や咀嚼回復食などの独自の用語も用いている。現在、摂食・嚥下の流れは先行期、準備期、口腔期、咽頭期、食道期、5期に分けられているが、咀嚼機能の重要性を考えた場合には準備期を捕食期、咀嚼期として6期に分け、介護食の議論にも一考を要する必要がある。




口腔の働きは歯で食物を切り刻み、擦り合わせ、唾液と練り合わせ、食塊をつくる。嚥下障害者のための調理法も食物をキザミ、つぶし、軟らかくして、とろみ(粘り)を付けるが、この工程は口腔の機能と同じである。すなわち口腔は嚥下食を作る自然の厨房なのである。嚥下障害でも噛むことができたり、嚥下に問題ない方が噛めないということもあり、嚥下障害の軽いものが咀嚼障害ではない。噛めないのか飲み込めないのかの正しい知識を把握し、対応していかなければならない。
口腔の重要性は噛む刺激が脳の活性化に関与し、味わう刺激が至福を生み、唾液の分泌が迷走神経を刺激し消化を促進するなど捕食、咀嚼で感知している。このことも踏まえて議論する必要があるのではないだろうか。キザミ食やソフト食も問題のある調理法だが、嚥下食も機能的に分類をするならば、とろみ食も嚥下機能の程度によって分類されなければならずより複雑なものになり、現場での混乱はさらに避けられないものになるだろう。分類は単純であるべきである。このように分類を単純化および明瞭化するならば介護食の定義は医療的行為、介護的行為、調理方法などの住み分けを明確にして議論されなければならない。