食介護マニュアル12

























































第12章:食介護の向こうには「最終回」

専門知識を共有したチームアプローチを

 気道感染予防の条件

2006年度の介護保険改正では、新たなる介護予防対策が導入される予定です。介護予防は高齢者が要介護状態に陥ったり、状態が悪化しないように生活支援していくことを目的としています。予防は大きく分けて閉じこもり、転倒骨折、気道感染予防があり、その対策としては筋力の向上や低栄養の防止、口腔ケアが介護予防サービスメニューとしてケアプランに取り入れることになります。

それでは、なぜ気道感染予防が大切なのでしょうか。高齢になると摂食嚥下機能や呼吸機能が低下し肺炎を起こしやすくなるからなのです。肺炎で亡くなる方の94.4%が65歳以上の高齢者です。その原因は摂食嚥下機能低下による食べ物の誤嚥や口腔内不潔による口腔内細菌の肺感染により起こりやすくなります。さらに口腔内環境の悪化は気道感染を起こすだけではなく、口臭や発音異常による閉じこもりや、味覚異常、摂食困難による低栄養状態を起こし、生活の質の低下や要介護状態に陥り、生きる意欲や生命の存続さえも失ってしまいます。そのためにも、口腔内を清潔に保つことや食べる機能を維持することが誤嚥性肺炎の大切な予防となります。

いわき食介護研究会が提言している「おいしくたべる条件」、食べる環境の改善(食べる雰囲気の整備、食形態の整備、食介助の適正)、口腔健康の維持(口腔清掃、口腔治療)、食べる機能を正常に維持すること(口腔リハビリ・食前体操)は、気道感染予防の条件となります。



 ただ人を救うことを願うべし

現在、各職種が食事介助に対してさまざまな研修を取り入れていますが、一職種で解決できる問題ではなく、他職種との緻密な連携をとることが大切です。従来のチームアプローチはあらゆる職種が専門知識を提供し、支援していましたが、このアプローチ方法ではマンパワー不足により、なかなか支援していくことができませんでした。そこで数少ない職種で支援できるように、他職種の専門的知識を共有しすることが必要となってきます。その専門的知識の向上のため、いわき食介護研究会は設立され、活動をしております。

食介護は「食べる意欲」が生きる糧を体内に取りこもうとし、おいしさを感じ、味わいたいと感じた時、その気持ちがもっと食べよう、元気でいたいという「生きる意欲」を感じさせるようでなくてはなりません。江戸時代の蘭方医、緒方洪庵先生は医の心得のなかで「医の世に生活するは、己のためにあらず人の為のみ、安逸を思わず、名利を顧みず、ただ人を救うことを願うべし」と唱えています。医療の世界だけではなく、介護の世界も同じであると思います。これからも要介護者の目線に立って食介護が行われていくことを願っています。

このホームページが食べられなくなってきた方の食介護の仕方、ケアプランの作成、およびご家族、ヘルパーさんのご指導に活用していただければ幸いです。       
                               市川文裕