食介護マニュアル10


















































第10章:食前体操・摂食嚥下リハビリテーション

おいしく食べるリハビリ

 廃用症候群と口腔リハビリ

「廃用症候群」という言葉があります。ヒトは立って歩くために全身の器官が重力に対応するように働いています。しかし、寝ている状態になるとその働きは不必要になり、関節や筋肉などの働きが不活性化し、器官の活性レベルが低下して序々に動かなくなってしまいます。この状態を廃用といい、この結果いくつかの障害を併発したものを廃用症候群といいます。

病気やけがなどで寝ている状態が長くなると、起きて歩くことが出来なくなってしまうのはこの廃用が原因となります。使わなくなった筋肉や神経は衰えていきます。顔面の筋肉や噛んだり飲み込んだりする筋肉も例外ではなく、それによって表情の動きや会話量も少なくなり、摂食嚥下の問題も起こってきます。また、噛むことが少なくなるにつれて唾液の分泌も減少し、味覚や口腔の衛生にも悪影響を与えます。そのためにも口腔の周りの筋肉や噛む筋肉のストレッチ、マッサージをする口腔リハビリが必要となってきます。

 「食前体操」の効果

いわき食介護研究会では毎日楽しく行えるように、ラジオ体操に合わせた口腔リハビリ体操「食前体操」を考案したので、その方法について説明します。


http://www.e-taberu.com/syokukaigo/topics/topics_shop.html

この体操は、首の体操、口腔周囲筋のマッサージ、顎・唇の体操、舌の体操?と4つの流れから成り立っています。それぞれの効果は次のとおりです。

首の体操を行うことによって首の周りの飲みこむ筋肉を活性化します。

口腔周囲筋のマッサージは口輪筋、頬筋、咬筋や唾液腺を刺激し表情や食物の取りこみ、咀嚼に効果があります。

顎・唇の体操は口輪筋、咀嚼筋を刺激し食物の取りこみ、食塊の形成を活性化します。

舌の体操は舌の筋肉を活性化し食塊の形成や送り込みに効果があります。さらに唾液の分泌を促進し、食物の嚥下に関与します。

この体操は、食事時の誤嚥予防や高齢化に伴う廃用を予防する介護予防のリハビリとしても大いに効果があります。ぜひこの機会においしく食べるリハビリとして、音楽に合わせた食前体操を活用していただきたいと願っています。