食介護マニュアル7

































































































第7章:高齢者・障害者の口腔

口腔低下をどのように予防するか

 食べる楽しみだけでなく命を奪う危険性も

高齢者や障害者の口腔疾患で、とりわけ問題になるのは機能障害です。衰えていく筋肉や障害を受けた神経が原因で開口障害や唾液分泌障害、発音障害、摂食・嚥下障害が起こります。

特に摂食・嚥下障害は低栄養や食べる楽しみを奪ってしまい、生きる意欲さえも失ってしまいます。さらに、食べ物の誤嚥により窒息や肺炎(誤嚥性肺炎)を起こし、死に至ることにもなります。肺炎で死亡する人の95%が65歳以上の高齢者であるのは、口腔機能低下による誤嚥性肺炎が原因となります。

 捕食期から咽頭期までに生じるさまざまな問題

摂食・嚥下障害は食べ物を取り込んで食道を通過するまでの過程でいろいろな問題が生じます。




捕食期

食物を口の中に取りこむ際に、口唇や舌の麻痺があると口唇を閉じられないために口からこぼれ落ちたり、口腔内を陰圧にできず、飲み込むことが困難になります。

咀嚼期

食物を飲み込みやすい食塊にする際に、正常な場合では頬粘膜が歯牙の頬側に付き、舌が舌側に付くことによって、自然と食物が歯と歯の上に乗り噛むことができますが、舌や頬粘膜に麻痺があると、頬や舌の間に落ちてしまい、噛むことが困難になってしまいます。

口腔期

飲みこむ際には、正常では舌の中央が凹になり食塊をまとめて喉に送り込みますが、麻痺により舌に凹ができず食塊がまとまりづらくなったり、舌が挙上せず喉への送りこみが困難となってしまいます。

咽頭期

嚥下時には飲みこむタイミングがずれ、誤って気管に入ってしまい、誤嚥を起こしてしまいます。

 摂食・嚥下障害を症状からチェックする

摂食・嚥下障害を疑うには次のような症状をチェックする必要があります。1項目でも常にある場合は、摂食嚥下障害を疑った方がいいようです。

□食べ物をよくこぼす

□食事の時間が長くなった

□軟らかいものを好むようになった

□食後、食べ物が口に残る

□食事中によくむせる

□食事が喉に詰まる感じがする

□食事中によく咳き込む

□痰がよくからむ

□食事が胸に詰まる感じがする

□飲みこんだ後、食べ物が逆流する

誤嚥性肺炎の原因には以上のような食物による誤嚥のほかに、最近では、口腔内の唾液や細菌が誤って気道に入りこみ起こることもわかってきました。



嚥下反射や咳反射の低下により、寝ている間に「むせ」などの自覚症状もなく口腔内細菌を含んだ唾液が自然に肺に流れ込むことで起こります。これを不顕性誤嚥といい、重度な肺炎を引き起こしてしまいます。

寝たきりの原因となる気道感染は、まさに口腔の機能障害により起こる誤嚥が原因となります。したがって気道感染予防としては、口腔機能維持のための摂食・嚥下リハビリ、口腔内細菌コントロールのための口腔清掃、義歯清掃を日ごろから心がけていかなければなりません。